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お買いもの日記だったり、つぶやきだったり

「泣くな、はらちゃん #9 」雑感

とりとめもない、ネタバレ雑感です。

 

 

 

 

今のところ私は、はらちゃん達の住む漫画世界は越前さんのノートには依存していないと思ってます。漫画世界は作者の記憶、そして思い入れの強さ(インナースペース)。ノートはただの出入り口みたいなものかなあ。そうでないと、本来は矢東薫子のキャラであるはらちゃん達が越前さんのノートから出てくることはないから。でも、なぜ矢東薫子と越前さんのインナースペースが繋がったのかはやっぱりまだ分かりませんけどね。

 

ところでちょっと横道に逸れますが、毎回のオープニングで漫画から飛び出すはらちゃんが涙をポロリと流しますね。あれは人間の赤ちゃんが誕生したときの産声みたいなものかなあと思ったりしてます。そりゃ、タイトルが「泣くな、はらちゃん」なんですから当たり前じゃん、て感じなんですが、それに赤ちゃんの産声は声だけで涙は流してないよ、かもしれませんが、私の頭の中では誕生を象徴するものになっちゃってます。どこかで誰かが書いてなかったっけ?赤ちゃんが産まれてすぐ泣くのは、この世界の哀しみを知るからだ…って。

 

 

はらちゃんは新しい世界にどんどん馴染んでいく逞しさを持ちつつも、周囲の人に気配りする繊細な心も持ち合わせています。8話のカマボコ工場でのアルバイト中、仕事がなかなか思い通りに進まない焦りを皆が感じ、どんよりした空気が流れ出したときに、はらちゃんは歌うのです。それがきっかけで仕事場に明るさが戻り仕事を無事にやり遂げることができました。

それから、テレビでこの世界の暗黒面を見てしまったときにも、このことは越前さんに黙っていようと言います。自分の住む世界を悪く言われたら越前さんもいい気持ちはしないでしょうと、はらちゃんは気遣うのです。本当に健気でいい奴!ですね。

そう、健気、が理由なのかな。第7話で笑いおじさんたちが越前さんを許したのは、大人としての物わかりの良さを見せたのかと思いましたが、それだけじゃないのかも。基本的にはらちゃんとその仲間達は人を裏切ることを知らないのだわ。大人として作られたキャラクターに現実世界を知らない子供のような部分が共存しているのね。初めてのサッカーに嬉しそうに興じるはらちゃん達を見てそう思う。そして、かまぼこ工場のユキ姐は母親の側でお手伝いをしている娘のようでした。ユキ姐が許してくれて良かったね、百合子さん。

 

そんな牧歌的というか、ほのぼのとした光景に突然の衝撃が襲います。

はらちゃん達の無邪気な善意と、通りすがりの若者たちのイラつきが衝突してしまうのです。ボコボコに殴られるはらちゃん達。暴力をやめさせようとするはらちゃんの目の前で起こるもう一つの衝撃は、越前さんも殴られてしまうこと。。。

そのときのはらちゃんの表情が凄かった(これ、長瀬くん上手いなあ)。彼の今までの柔和な行動からは考えられないくらいの暴力性が発動します。相手を殴る殴る殴る…。それくらいの激しい怒り。越前さんが止めに入らなかったらどうなっていたか分かりません。

「こんな世界でごめんなさい!」

越前さんの叫びはどんなふうにはらちゃんの心に届いたでしょうか。

 

傷ついた自分の拳を見つめながら、はらちゃんはつぶやきます。

「心が痛いです」と。そして、「わたしを嫌いにならないでください」と。

自分自身の中に生まれてしまった、怒り、憎しみ、暴力に怯えているようでした。

そして、「元の世界に帰りたい」と叫ぶ、あっくんに何も言えなかったはらちゃん。いつもの彼なら「それでもこの世界は素晴らしいです!」と言えたはずですが言葉に詰まり揺らいでしまう姿が痛々しかったです。

ここで越前さんは決心します。彼らを漫画世界に帰還させること。

それから、自らが漫画世界の中に入ることを。

 

このシーンでは思わず涙が溢れてしまいました。切なすぎる。

これは越前さんの精神的な自殺ではないだろうか。

そんな私の感想とは裏腹に、越前さんはスッキリしたような笑顔で漫画世界に現れます。驚くはらちゃん達。

ここではらちゃんは「私の世界」を歌うのですが、他の皆と輪になっているフリをして、実はずっと越前さんに背中を向けているように見えます。

越前さんの「ずっと一緒にいましょうね」の言葉に振り向いたはらちゃんが一瞬見せたのは哀しみをたたえた瞳、そして作ってみせる笑顔はとても優しい…。

決して彼は越前さんが漫画世界に来たことを歓迎していません。恐らく葛藤していたことでしょう。歌いながら、このときに初めてこの歌詞の意味を、現実世界を嫌う越前さんの心を理解したかもしれません。

そしてもうひとつ彼は理解しているはずです。これが異常事態であることを。この漫画世界は越前さんのノートからのインプットにより変化が生じてきました(越前さんの場合、愚痴吐きばかりでしたけどね)。でも、作者自身がこの世界に入ってしまったら、インプットは行なわれず何も変化が生じません。存続はするかもしれませんが、ただ続くだけでそこでは何も始まらず、何も終わらない世界となるのです。現実世界で心傷ついた者だけの無限ループの世界。

 

はらちゃんは果たしてそれで満足するでしょうか。

漫画世界が暗いから、神様に会いに行こうと現実世界に飛び出したはらちゃん。

はらちゃんが現実世界での経験を「素晴らしい!」と感嘆したのは、そこではいつも新しいことが始まっているからだと思うのです。

それにはらちゃんの性格からしてこのままでは終われないと思います。あのとき心が揺らぎ、何も言えないまま現実世界を去ってしまったことを、きっと後々悔やみ続けることになる。現実世界に対する自分の心に決着をつけるため、はらちゃんは一度は現実世界にまたきっと戻ってくる。そんな気がします(ちょっと昭和のヒーローの法則)。

 

にしても、越前さんは今回頑張りましたね。はらちゃん達を守るために暴力を振るう相手の前に立ちふさがりました。あっけなく倒されてしまいましたが、以前の越前さんだったら喧嘩に関わらないようにしただろうなあ。

越前さん、はらちゃん達を守れなくてショックだったろうと思います。

みんな傷ついた分を取り返せるくらい、幸せになって欲しいものですが、次回ついに最終回、ラストがまったく予想できませんね。

さあ、百合子さん、そして、特にヒロシ、君の出番だよ!