muna log

お買いもの日記だったり、つぶやきだったり

富野監督と福井晴敏氏トークショー(2)

富野監督と福井晴敏氏トークショー

<質問コーナー>

 

A(10代の男の子):
富野監督、お誕生日おめでとうございます

 

富野:
ありがとうございます

 

A:
アニメーション部門最優秀賞おめでとうございます

 

富野:
いや、いろいろ事情がある、ということが分かりまして落ち込んでます

 

A:
お伺いしたいんですが。TVシリーズ観た時は、フォウとカミーユの会話っていうのが
ラブシーンに見えたんですが、第三部観てから第二部観たら、これはラブシーンでは
ないと思えたんですが、監督はどういうつもりでつくられたのか、ちょっとお伺いし
たいんですが。

 

富野:
今、お感じになったとおり、で、そういう風に思っていただけるように作りました。
ラブシーンを描いていますが、ただのラブシーンではありません。劇をつくるとはそ
ういうふうなことだと思っています。

 

A:
私にとってはなんですが、劇場版カミーユにはアーガマに場所があるなっていうのを…

 

富野:
もちろんです。で、実はアーガマって存在はTV版と全く同じ位置づけにしてあります。つまり、受け手側がどういう風に思うかってことで、それこそ居場所の問題というのは確定してくる、、そういうメッセージをこめたつもりです。

 

B(20代男性):
はじめまして。富野監督と福井さんの名コンビっぷりは、TVのお笑い番組を観るより
面白かったです。

 

福井:
ありがとうございますって言っていいのかどうか、、

 

B:
カミーユみたいなキレる若者が増えていくだろうなっていう予言を的中させた、とい
うことでお伺いしたいんですけれど。
現代では、またぶり出してきた、いじめ問題ですとか、履修もれの問題ですとかあり
ますし、もうすぐ、ゆとり教育の犠牲になっていた子供達がこれから大人になってい
くと、どんな社会になるのかな、、と、来年から社会人になる自分も心配してるんで
す。富野監督はそのへん、どうお感じになっているのかお伺いしたいんですが。

 

富野:
そういう問題については、こういう立場の人間ですから、それほど具体的に鮮明に考
えていません。
このガンダムのような仕事を30年やらせていただいて感じていることもあります。
大衆、それと愚民と言ういやな言い方もしてますが、大衆の力というのを僕自身、あ
る時期から信じるようになりました。
社会全体には時代層という言葉があるんですが、つまり大衆、不特定多数の人によっ
て醸し出された空気感だと思っています。。間違いなく右と左にゆらいでいる、、右
と左という表現が嫌ならば、波のようなバイオリズムがあるということを信じてます。

で、ゆり戻しがあります。今のご指摘のような問題、実を言うと、お気づきになりま
せんか?この半年、急に鮮明に出てきた言葉なんですよね。妙に意識的に出て来た。
だけど、言い出しっぺが誰なのかと言われると、その特定はできないはずなんです。
どういうことかというと、やはり、人々、というマスが去年まで、、もうちょっとだ
け嫌な言い方をします。小泉政権がやっていたことが、、あれ?と思ったことのリバ
ウンドが始まっている。当然、これの、もっと傷も出てきます。だから膿みも出まし
ょう。それについての修復の反動も起こってくるのがこれから数年だと思います。そ
れで落ち着くのが10年くらいです。また!嫌な時代に入ります。が間違いなくこれ
から日本社会が自己治療しなきゃいけない時代だと思います。この時間がこれから1
0年くらいゆるやかには進んで行くと思いますので、それほど悲観する必要はないと
思っています。で、重要なことは、その自己治療する一員の中にあなたもいらっしゃ
る。ホントにすみません、我々の世代が作ってしまった問題があると思いますが、ホ
ント面倒見て頂きたいと思います。我々の世代っていうのは死んで行きます。無責任
に。ほんとにそういうところが申し訳ないと思いますがそれほど悲観する必要はないと思います。
ただ、ガンダムワールドの言い方をします。もっと嫌なことが、、実を言うと、この
7、80年の間にあります。それに対しての心の準備がとても大事な問題として15、6年後に鮮明に社会に現れてくると思います。今、この話はこれ以上はしませんし、させないでください。

 

福井:
じゃあ、言うなっていう話なんですけどね。
付け加えるならばですね、これから揺り戻し期間というのに入ったときに、極端にいったときには極端に振り切れるので。極端に行き切る前の寸止めを我々の人間力でどうするか、、というところだと思います

 

C(20代男性):
監督は今、経済について興味があるとどこかで読んだのですが、ホントですか?

 

富野:
自分の家計のレベル、、自分が死んで行くまで貧乏はしたくない。という意味で経済
の心配をしています。

 

C:
あ、そういう意味なんですか。そういう劇を作りたいということではなくてですね?
それをモチーフにしたいとか。

 

富野:
うん、え? 今のよく分かんない。

 

C:
僕が読んだ記事では、経済をモチーフにして作りたいんだけれども、経済に詳しくないので勉強中ですってことを仰ってたんですが。

 

富野:
いや~、それは覚えてない。そのレトリックは、順序は、あの~、その記事を最終的にまとめたライターのかなり、ボクに対しての過大評価です。

経済というものを即テーマにするってことは想像外ですし、それで劇が組めるとは思ってはいません。劇を作るっていうのはもうちょっと違う視点を持っています。そういう意味では、、、分かりました。どういうところに書かれているかって事も思い出しましたが、物語を作るとか、エンタメの仕事をやっている人たちに対して、過大な要求や評価をしてくるライター、評論家がいるんですよ。それは基本的にボクは間違っていると思っています。
で、その枠を外れたところで経済論を言えば、どういうことが言えるかってことで1つだけ、、経済評論というのがあるとしても所詮、あいつらが何を予測したか、皆さん方お気をつけいただきたい。よほど、、ほとんど当たってませんよ。実は結果論でしゃべっていることの方が多い。彼ら経済評論家とか、何とか総合研究所が出している発言というのは気をつけていただいて、そういうものに惑わされて迂闊に投資に手を出すのはおやめになった方がいいと思います。
とは言っても、デイトレーダーになって、1ヶ月で15億円稼ぎたいというのは夢としてありますけれども、、、え~、そういう方のお話を聞いて思うのは、24時間病気のようにパソコンの前に離れられない人生っていうのは想像したくありませんし、体験もしたくないので、、、今、僕は皆さん方のおかげで暮らさせていただいているので、それで十分です。ちょっと前に話した事だけはお気をつけいただきたいと思います。

 

C:
さきほど監督が、『元気な死』と言うのをおっしゃときに笑いが起こったじゃないですか。でも、やっぱり、どうやって死ぬかとはどうやって生きるかに繋がると思うんですよ。

 

富野:
はい。決定的に繋がります。

 

C:
そういうのを冗談として捉える風潮っていうのはどういう風にお感じになりますか。

 

富野:
あのね。それは違います。昔からそうなんです。
それはどういうことかっていうと、こういう言葉遣いをする大人がいないからなんですよ。いないから、いきなり聴かされるから。え?と思うから笑うだけのことです。
でも、本気で自分の生き死にの問題で考えれば、嫌でも死というのは突きつけられる問題です。
突きつけられるのが辛いから、考えたくないから、笑ってごまかすだけです。
この心の状態っていうのは今に始まったことじゃなくて、ずうっとあります。
僕自身が元気で死んで行けたらいいな、という言葉を使っているのは、この2、3年、意識して使っています。
というのは、我々はこういったことを聴くことに慣れる必要がある。
年寄りが手をあげて言い出すしかないので。
ここで初めて「元気で死んで行く」をえ?!と初めて聴いた方は当然笑うでしょうし、笑って頂いて結構です。
ただ、病気をしてしょうがなく死んでいく、、それからこれが寿命なんだからこれでいいかと死んでいく、それから当たり前に死んでいく、そういう死があるなかで当然です。
交通事故、殺人など報道されているような死に方は、死に方を考えたときにとても無
惨だと思います。戦争で、というのはもっと無惨でしょう。
で、無惨だから回避しなければならない、という思考回路を人類はあまり考えてこなかった、というふうに思っています。
ですから、死ぬことを考えるというのは重要なことで、死ぬことは最終的にいかに生きるかということに繋がって行きます。

ここんところTVの朝のワイドショーでやってますよね、飲酒運転する人をつかまえて、あこぎなコーナーだとは思いますが、あのときの酔っぱらいの反応を見ていると。
やはりあれをやっていると、お前は人殺しになるんだぞという問題は、自分が殺され
るかもしれないことを想像のできない人が酔っぱらい運転ができるんだと思います。
ですから、死んで行くということをキチンと考えるということはして頂きたいと思うし。僕のような年寄りがお若い方にお伝えできるただ1つのことだと思っています。

皆さんがいてくれたことで、のたれ死にする局面を迎えずに済んだと思いますので、
死ぬまでは頑張りたいと思います。


D(20代男性):
映像関係を学んでいる人間の一人なんですけれども、
こういうことだけは最低限するべきだろうと思っていることがあれば。

 

富野:
聞きづらくって申し訳ないと思いますが、たったひとつですけれども決定的に重要な
ことがあります。映像以外のこと、世間を見るということです。
映像のことは現場に入ってスタジオに入って嫌でも覚えます。映像の技術を覚える必
要はありません。
どういう風に世間を見ることが出来るか。世間を観る能力。
映像が今、大量に出ています。そこを勝ち抜いて行く為には重要なのは美しい映像で
もなんでもないんですよ。どういうメッセージを込められるかということです。
メッセージを獲得するためには、観察眼しかありません。
それから、常識をコモンセンスを徹底的に高めるということです。その中には道徳倫理もおさめるということも含まれています。頑張ってください。

 

 


  *   

これで終了です。
トークの前半は、お二人はほとんど立ってました。富野監督は途中でヤンキー座り?をしたり、ステージから出て行こうとしたり^^;面白い人でしたよ。
お二人が話している様子を見て感じたのは、場慣れしてるなーということ。トークや
講演会のお仕事を結構こなされているのでしょうね。

服装は富野監督のほうがオシャレさんって感じでした。
福井さんはジーンズに革ジャンといった出で立ち。
富野監督はウールギャバジンっぽい素材の黒いパンツに白いシャツと黒いジャケット。
シャツとジャケットの素材がちょっと変わっていて、白いシャツはわざと少しクシュ
クシュしてて、ジャケットも少しモコモコしたウール。黒地に茶かグレーの細いスト
ライプが入ってました。監督のご趣味なのか、奥様がスタイリストされているのか、
どちらでしょー。